sait0’s blog

思想があり、それを概念として提示するだけではなく、実践する生き方

9. 他人には他人の

他人には他人の地獄がある。あーまたこの感じ、何かに集中している時は脇目もふらずにそれに没頭しているのに、それが故にその魔法の時間が終わると私はいつも抜け殻のように何もかもやる気がなくなってしまう。一人暮らしをはじめて4年ほどが経ってようやく自分のバイオリズムというか、癖みたいなものがわかってきた。自分はどうやら一点集中型で、何かに集中している時はそのことしか考えられなくて、ずっとそのことについて取り組むことができるのだが、一度その緊張の糸が切れると途端に電池の切れたおもちゃのように動けなくなってしまう質のようである。

今年に入って、というか昨年末からずっと卒論の執筆に集中してきて、それが終わったら羽を伸ばそうと友達との旅行を立て続けに計画した。今はそれが全て終わってこれから卒論発表の準備を急ピッチでしなければならないのだが、それまで集中モードに入っていたためにそのモラトリアム期間に入ってしまい、もう何もやる気が起きない。旅行から帰ってきてからもう3日が経とうとしているが、家の目の前にあるコンビニに行く元気もなく、旅行に行く前に買ってあった袋麺を毎食食べるような生活を送っている。

これまでは毎回そんなことを繰り返している自分が本当に嫌で、毎回このモラトリアム期間は自己嫌悪で死んでしまいそうになっていた。やりたいと思う気持ちはあるのに体が動かず、気づいたらYouTubeを一日中観ているような生活。本当にそんな風になってしまう自分が嫌で仕方なくて、なんとかそれを克服したいと願っていた。しかし最近はそれが自分の特性なのだから、そんな自分とうまく付き合っていくしかないのだなと思えるようになってきた。それは多分色んな人と出会って話を聞いたり、映画や本に触れる中で、完璧な人間なんて一人もいなくて、みんなそれぞれの地獄を抱えて生きているのだということがわかってきたからだと思う。

今朝も絶対に終電を逃さない女さんの『シティガール未満』を読んでそんなことを思った。フリーライターなんて職業で生きている人はみんな文章を書くことが好きで、そんな好きなことを仕事にできているすごい人だと思いがちだが、そこにはその人なりの事情があってみんななんとかその仕事をして生きている。自分以外の誰かの人生に触れるとき、それは往々にして良い面がクローズアップされることが多くて、そればかり見ていると、ああ自分はなんてだめな人間なんだと思う。けれどもその人にもその人なりの苦労やしんどいことがあってそれをなんとかやりくりして日々生きているのだということも忘れてはいけないと思う。時には自分に厳しくすることも大切だし、そうしないといけない場面も生きていればたくさんある。けれども常に戦闘体制でいなければいけないことなんてなくて、これでもいいのだと自分を甘やかす時間も人生には必要である。そのやり方や塩梅はそれぞれが自分にあった落とし所を一生探していくのだろう。ようやくやる気が出てきたので、図書館に行って発表の準備を頑張ろうと思う。